「エアコン使用を躊躇する高齢者たち」なぜ?彼らの命を守るため周囲ができることとは?
きのう(11日)大阪府吹田市の住宅で、89歳の男性と92歳の女性とみられる遺体が見つかる痛ましい出来事がありました。
「室内にエアコンは設置されておらず、警察は2人が熱中症で死亡した可能性がある」とみて、調べを進めているということです。
2025年7月15日 14時10分 RSK山陽放送
もっと伝える努力を
これはまた気の毒な事件で大変心が痛みますが、このような残念な事故を減らす方法を、もっと真剣に考える必要があるのではないでしょうか。
私も機会がある度に一般の方に向けた情報発信をさせていただいておりますが、それが高齢者の方達に届いているかと問われれば、決して自信を持ってお答えできる状況ではありません。
「エアコンの使用を躊躇する」高齢者が多い
まず記事にあったのは、国内の家電機器メーカーが行った調査では、
・「熱中症で救急搬送された人の半数以上が高齢者」
・「熱中症を発症した場所は『住居』が3割以上」
・「熱中症対策の一つとして『エアコン』が重要であるものの、現状、様々な理由から使用を躊躇する高齢者がいる」ということです。(三菱電機 2021年度調査)
確かに、エアコンを贅沢品と捉えていている高齢者は意外と多いものです。そんな意識が少しずつでも変わってくれると良いのですが。
記事では、介護支援事業所の代表で、看護師・主任ケアマネージャーさんが、「介護の現場で得た経験」や「高齢者の親を持つ家族との話」をもとに提言しています。
高齢者が「エアコンをつけたがらない理由」とは
ケアマネさんによると、高齢者は経験や思い込みから、これまでの習慣や考え方を変えるのは容易ではなく、昔からよく聞く「エアコンは身体に悪い」という話を信じている方も多く見られるそうです。
そして、高齢の親がエアコンをつけたがらない理由は、老化によって皮膚の感覚や内臓の機能が低下しているため、 暑さを感じづらくなっていることが原因で、現場では、暑い中でも平然と過ごされている高齢者も多いと指摘しています。
(看護師・主任ケアマネージャー)「エアコンをつけずに在宅されている高齢者のご自宅を訪問させていただくと、高齢者の方が『暑かったでしょう』と声をかけてくださりつつ、エアコンをつける場面によく遭遇します」
「つまり、暑い時にはエアコンをつけたほうがよいのはわかっているが、自分は暑さを感じていないということがわかります」ということだそうです。これは大変危険な状況ですね。
さらに「高齢になると暑さを感じる感覚が鈍くなるため、『暑くない』と言っていても、しっとり汗をかいている場合や、気温に合わない服装をしていることがあります」
「また、内臓の機能が低下していると、体温の調節が上手くできないこともあります。すると、脱水に陥りやすく 熱中症に移行しやすくなるため注意が必要です」と書かれていました。
3つの意識改革
高齢者の方に、エアコンを使用してもらうための意識づけはどうすればいいのか…、ケアマネさんは、まず3つの意識改革から始めることが大切だと言います。
3つの意識改革①「環境の変化」への理解を
気象庁によりますと、昨年は日本の年平均気温が+1.48度と観測史上1位を更新していて、統計開始の1898年以降、これまで最も高い値だった2023年の+1.29℃を大きく上回り、最も高い値だったということです。
このため、まずは高齢者の方に「昔と違い、今は気温が上がっていることを理解してもらう」ことが重要だと言います。
3つの意識改革②「感覚の衰え」への理解
通常は、外気温の上昇に伴って体温が上がれば、体が暑いと感じて汗をかくなど、体温を下げようとする機能が自然と働きます。しかし、高齢者はこのような体温調節機能が低下してしまい、体温が上昇していたとしてもうまく体が対応できず、体温を下げることが難しくなる方が多いため、高齢者自身に暑さを感じにくくなっていることへの理解を促すことが必要だとしています。
3つの意識改革③「電気代」への理解
「エアコン」は、つけ始めが一番電力を消費するということを知らず、「つけっぱなしにしていると電気代がもったいない」と考えている高齢者もいるそうです。
実験の結果三菱電機では、エアコンはつけ始めた時が最も消費電力が高くなっていることがわかっていて、また、電源の「オン」「オフ」 を繰り返すような場合、すぐに室温が上がり熱中症のリスクも増加するということです。
伝え方も大事
記事によれば、「『エアコンをつけないとダメ』ではなく、『いつまでも元気でいてほしいから、エアコンをつけてほしい』といったポジティブなメッセージを伝えましょう」とか。
「他にも、スマートフォンから室温が確認できるような温度計や、エアコンを使って室温を確認する方法もあります。無理のない方法で、定期的に室内環境を見守ってあげましょう」とも書かれていました。
熱中症から高齢者の命を守るためには、「熱中症の危険について粘り強く伝える」「地域との連携」「IT技術の活用」など、より一歩踏み込んだ対応が求められているということです。
私事で恐縮ですが、高齢の両親を見守るより良い方法を見つけて、少しでも快適に過ごしてもらえるように努めたいと思います。