日本とイタリアの職人文化にある共通点と違い
日本を代表するグラフィックデザイナーで、株式会社日本デザインセンター代表。無印良品のアドバイザリーボードも務める原研哉氏。大阪・関西万博会場ではNPO法人ゼリ・ジャパンが出展する「BLUE OCEAN DOME」の展示構想・ディレクションを担当
2025年5月28日 15時30分 東洋経済オンライン
イベントでの様子
これはまた楽しそうなイベントがあったようですね。
記事を読んだところでは、大阪・関西万博のイタリア館で開催した「メイド・イン・イタリアの日」を祝うイベントに無印良品のアドバイザリーボードという肩書で登壇した時の様子が書かれていたようです。
マカロニという造形物
皆さんご存知の無印良品に関わられているということもそうですが、その業界では知らない人はいない有名な方で、今回の万博でもご活躍されているようです。
そんな方が語られていた中でも面白かったのが下記の一節です。
「私が興味があるのはマカロニです。食物のデザインというのはとても重要。小麦粉を粉にして食べるという場合でも、それに形を与える必要があります。どんな形でもいいはずなのだけれど、イタリアはそれをマカロニという立体的な造形物にして食べる。
ミケランジェロの時代から続いている奔放な造形性みたいなものがその中に潜んでいるのを感じます。面積が大きく、均一な厚みで工業製品としても作りやすく、それでいて毎日見ても飽きない形。(イタリア人は)それに美味しいソースを付着させて食べている」ということ。
本当に、パスタというだけでどれだけの形があるか分かりませんが、マカロニ同様楽しい形をしているものも多いですし、その形にはどれも理由があったりしますので、イタリア人の美意識を感じるところですね。
メイド・イン・イタリアの日
ところで、記事にあった「メイド・イン・イタリアの日」はイタリア政府が2024年に定めた新しい国民の祝日で「イタリアのクリエイティビティと卓越性を称える」ことが目的だということです。日付はレオナルド・ダ・ヴィンチの誕生日である4月15日なんですって。覚えておきましょう。
職人文化
次に記事の中で興味深かったのは、「イタリアと日本の職人文化には、創造性、職人技、イノベーションにおいて多くの共通点がある。両国がお互いの経験を教え合ってインスピレーションを与え合うことが重要」というお話です。
そう語ったのはマルコ・グラネッリ氏。イタリアに150万社あると言われている中小・零細企業を束ねている団体コンファルティジャナート(Confartigianato)の会長という方がおっしゃっていました。
ジウジアーロ
また、13歳だった1978年に父の仕事で日本を訪れたというジウジアーロ氏は、その頃から日本との深いつながりを持っている。自身のキャリアにおける成功の多くが日本での活動、特に日本の自動車メーカーであるトヨタやスズキとの仕事を通じたものだと強調した。ということ。
ジウジアーロといえば、世界的に有名な自動車デザイナーで、日本の車に与えた影響も大きいと思います。そんな方が日本に来られていたのも驚きですが、下記のように語られていました。
日伊の両国には「美の追求、調和、そして柔軟に革新する姿勢など、多くの共通点がある」ことを指摘。日本の自動車産業のエンジニアたちがより良くするために努力を惜しまない意欲を持って、イタリアを凌駕したと歴史を振り返った。ということです。
日本にもジウジアーロさんがデザインを手がけた車が多くありますので、中には所有された経験のある方もいらっしゃるかもしれませんが、どこか宇宙的な近未来感のあるデザインが多いように思います。
奥山清行さん
そして同じく登壇されていたのが、イタリアのデザインがカーデザイナーを志すきっかけとなったという奥山氏。「イタリアと日本のものづくりには職人技を『見て学ぶ』という共通点がある」と語るが、両国で一番違うのは「職人の社会的地位や価値」だと言う。イタリアのほうが圧倒的に高く評価されている、ということをおっしゃっていました。
さらに「日本はイタリアから、職人技をグローバルブランドに発展させる方法や、優れた中小企業や文化を世界に広める方法を学ぶべきだ」と提言した。ということ。
また、イタリアで日々続けられている「議論の重要さ」にも言及。日本も議論を通じて学びを深める必要があると述べた。さらに日本のデザイン教育の現状にも触れ、世界レベルに達するにはイタリアなど海外での経験や多くの美しいものを見る機会が重要だという見解を示した。とも書かれていました。
職人の地位と価値
さすが奥山さん、物事の本質を鋭く突いてくるご意見です。本当に職人の社会的地位とその価値の向上、認知を進めないといけない、と私も思っていますので、微力ながら職人の保護育成を弊社事業の目的としています。
日本のものづくりを止めないために、職人さんをはじめ設計や施工管理の技術者についても、同様の保護育成を行なっていく必要があると考えていますので、国民の皆さんにも是非お力添えを賜りますようお願い申し上げます。
ちなみに、私は奥山さんがデザインされたクワトロポルテが好きです。