能登半島地震で倒壊した建物の特徴とは?
元日に発生した能登半島地震から1ヶ月あまり経ち、被災地ではさまざまな検証が行われています。倒壊の被害に遭った家屋には、どのような特徴があったのでしょうか?
2月10日放送のCBCラジオ『大石邦彦のNOW ON SHARE!』では、CBC論説室の大石邦彦アナウンサーが、地震による倒壊リスクの高い家について解説します。
2024年2月14日 5時55分 RadiChubu
調査と情報収集
今まさに多くの専門家が現地に入って細かな調査を行っています。私達建築関係でももちろん行政や各研究機関、大学などが各専門分野ごとにデータを集めているところのようです。
そんな中でも速報が届くようになってきましたので、少しずつ報道されるようになってきたのではないでしょうか。
建物の倒壊
まず記事にあったのは、最大震度7を記録した能登半島地震。2月7日時点で、石川県内では240人の犠牲者が確認されています。亡くなった多くの方の死因が「建物の倒壊」によるものでした。
アナウンサーさん「どうすれば倒壊リスクを減らすことができるのでしょうか?」その取材を通じて、3つの要素が重なると、建物は崩れやすくなることがわかったそうです。
ひとつ目の要素は、古い木造家屋にとって苦手な「揺れ」が起きたこと。今回の地震の揺れの周期は1-2秒。古い家屋は長周期の揺れには弱かったようです。
地盤が要因
2つめの要素は「地盤」。
アナウンサーさん「液状化の現象を目の当たりにしてきました」「ここで、今まで見たことのない光景を見てきました」と言われていました。
内灘町では建物が垂直に沈んでいたり、玄関や階段が沈み込んでいました。
こうした「液状化」によって、建物が倒れているところがいくつもあったそうです。
軽いものでいうと、マンホールのふたが、背伸びしないと見られないほど飛び出していました。逆に電信柱は沈み込み、信号機が地上から手が届く高さになっていました。さらに地盤が緩いところでは、家が1-2メートルも沈んでいました。とのこと。
さらにアナウンサーさん「建物自体が倒壊している現場をいくつも見てきました」2階の重みで潰れた家、道路側に倒れている家など、倒壊している家屋が何百軒もあったと。
建物の構造と仕様
そして、3つめの要素となるのが「建物の作り」。総じて倒壊していたのは「屋根が重い家」でした。
現在では軽量化されている瓦も増えていますが、この地方ではひとまわり大きく重い「能登瓦」が使用されていたため、重みに耐えかねて潰れている家が見受けられたとのことです。
さらに軒並み倒れていた昔ながらの木造家屋の特徴は「壁が少ない」こと。ドアに面している開口部が大きい建物ほど、倒れていました。
このあたりの条件は以前から言われていたことではあるのですが、やはり耐震補強や建て替えが進んでいなかったことが、被害を大きくしてしまったのではないでしょうか。
木造住宅の耐震基準は
記事によれば、年代別にみると、倒れていた木造家屋の多くは、1981年以前に建てられたもの。見た目では築50年は経ている建物で、古い耐震基準の元に建てられた家屋です。
また「2000年以前に建てられた建物も要注意」とも書かれていました。耐震基準が再び変更されたためです。
日本の建築基準法では、大きな震災の度にその基準を強化してきました。その結果は確かに地震に対して強くなったと思いますが、それはあくまでも基本的に脆弱な構造を補強してきただけのことで、根本的な解決にはなっていません。
弱いものに対して補強する、対処療法的な進め方も必要な場面もあるでしょう。しかし、すでに結果を確認出来ていること、ベースとして圧倒的な強さを持っているということとは全く違うことなんです。
例えば国が作った指標で耐震等級というものがありますが、これも同じ土俵に並べること自体がおかしいということに気付いていない制度設計の残念なところなんですね。
町の中に1棟でも多くのRC住宅を建ててもらいたいと思います。是非ご検討ください。