耐震基準の地域格差を見直しへ…リスク低いとされた能登は現行では東京の10%引きの強度
国土交通省が、建築物の耐震強度に地域ごとで差をつけている制度の見直しを検討していることがわかった。
能登半島地震や熊本地震など、半世紀近く続く現行の基準で必要な強度を割り引くことが認められている地域で大規模地震が相次いだことを受け、基準を全国一律とすることも視野に入れている。
2024年3月22日 5時6分 読売新聞オンライン
おかしな制度
これですね、もう何十年も前からこれで良いのか?と疑問を持っていた専門家は多かったと思います。
もちろん日本全国で地震発生率を比べれば、その大小があるのも確かだと思いますが、それは地球の長い歴史の中ではほんの一部ですし、すでに活断層の有無やプレートの状況などからも、日本に安全が保障されるような場所は無いに等しいこともわかっていますからね。
実際に近年の震災は、それまで忘れられていた地域、地元の人たちですらまさかここで、というような地域でも発生しているわけです。
そんな日本において、これまでは地域によって求められる耐震強度に差をつけていたのは、専門家や政府の怠慢があったと言われても仕方がないように思います。
地震地域係数
記事にあったのは、耐震基準は、震度6強~7程度の地震でも倒壊しない強度を原則とするが、構造計算が必要な鉄筋コンクリートの建築物と3階建て以上の木造建築物では地域差を設定。地域ごとにリスクを評価し、耐震強度に「地震地域係数」を掛け合わせることが建築基準法で定められ、係数が国交省の告示で規定されている。とありました。
ここで言う「地震地域係数」と言うのが、過去の記録を基に、発生頻度や被害の程度などに応じて、国が1・0~0・7の範囲で定め、構造計算時に掛け合わせる数字です。1952年に国が各地域の係数を告示し、80年に1度改定されました。
何を基準にするか
それだけ古い知見に基づいた数字ですし、それを疑いもせずに使い続けていたことで、被害が大きくなっていたら大変残念です。
私的には、鉄筋コンクリートは全ての建物で構造計算を行いますが、木造住宅やハウスメーカーの住宅では、構造計算すら行われずに建てられていると言うことも、非常に疑問だと思います。
記事にはさらに、東京都や大阪府などはリスクが大きいとして係数は「1・0」だが、新潟、広島県などは「0・9」、福岡、長崎県などは「0・8」とされ、構造計算時にそれぞれ強度を1割、2割下げることができ、一般的に建築コストが低くなる。とも書かれていました。
現行の係数は1980年に規定された。2016年の熊本地震、18年の北海道胆振(いぶり)東部地震で震度7が観測された地域はいずれも「0・9」だったが、被害は2階建て以下の木造住宅が主で、係数は大きく影響しなかったとみなされ、見直しには至らなかった。
しかし、最大震度7を観測した1月の能登半島地震が発生したエリアも係数は「0・9」で、国交省は本格検討にかじを切ることにしたと言うことです。
防災意識とRC住宅
記事によれば、国交省幹部は「耐震強度に地域差があることが、防災意識を醸成する妨げになりかねない」としている。とも書かれていました。
確かに、係数の低い地域に暮らしていれば、ここは地震が発生しないと思い込まれる恐れもありますね、それを理由に防災意識までもが低下してしまっていたら、災害は地震だけではなく台風や落雷、竜巻に豪雨、積雪、酷暑など、暮らしを続ける上で脅威となるものは想像以上に多いです。
日本の住宅は断熱性能も低いのですが、本当の強度も十分とは言えない建物が多いのも事実です。だからこそ、この国にもっともっとRC住宅を増やさなければいけないと思っています。是非ご協力ください。