「すきま風と結露でカビだらけ」の賃貸物件を量産している…なぜ、日本の住宅性能は「中国、韓国以下」なのか
「持ち家か? 賃貸か?」
このテーマは、さまざまな専門家がそれぞれの立場から主張し、決着がついていない議論です。ただ、これまで出てきた主張の中で、決定的に見落とされている視点があります。
結論としては、日本に住むなら持ち家を選ぶべきです。そして、見落とされている重要な視点とは、「日本の住宅性能は、諸外国に比べて圧倒的に低く、そのデメリットはとても大きい」ということです。
2024年10月8日 17時15分 プレジデントオンライン
住まいと健康
人類永遠の課題とされている話題ですが、今日の記事ではその論点として住宅の性能に目を向けた内容となっている点が新しく、また本質に迫ったものとなっています。
これまでは単に経済的な側面だけを比較している内容が多かったのですが、それと同等以上に健康や快適性を考慮すると、持ち家が有利ということが書かれていました。
賃貸住宅の現状
しかし、記事によれば、特に賃貸住宅は、十分な性能の住宅の供給がほとんどありません。そのため、日本の賃貸住宅では、諸外国の基準に照らしてまともな性能の家で暮らすことは、ごく一部の例外を除いて、残念ながらほぼ不可能であるということなのです。
「住宅の性能」とは、さまざまな要素から構成されますが、日本の住宅は、特に「断熱性能」と「気密性能」が非常に劣っています。これらの性能は、欧米はおろか、いまや中国・韓国よりも低いレベルです。
日本の住宅の性能が、中国・韓国よりも劣ると言われると、まさかと思う方も多いのではないでしょうか。ですが、これは事実なのです。
気密性能が大事
さらに記事に書かれていたのは、このように、断熱性能向上の取り組みは、諸外国に比べて非常に遅れています。ところが、それ以上に、すきま風のない家である「高気密化」への取り組みは、圧倒的に遅れています。断熱性だけ高めても、すきま風だらけの家では、意味がありません。ということ。
弊社では、20年以上前からRC(鉄筋コンクリート)住宅にこだわって、特化して建築を提供させていただいていますが、そのきっかけとなったのは阪神淡路大震災での被害状況をいろんな側面から検証した結果でした。
その当時、日本の住宅ではまだ断熱という概念も持たない設計者や施工者が多かったですし、実際に造られていた住宅では、ほとんど効果のない断熱材が形式的に設置されていたり、もちろん耐震性能もまだまだ安心できるものではありませんでした。
また、気密性能ではまだまだ木造住宅が中心でしたので、その構造上すきまは有って当然とされていましたし、そのすきまで家は呼吸をしているとか、訳のわからないことを言う人も大勢いました。
諸外国の基準と日本基準
記事にもありましたが、外国では気密性能に関して厳しい基準が定められています。気密性能は、C値という指標で示され、値が小さいほど高気密であることを意味します。
例えばドイツでは0.3cm2/m2以下、ベルギーでは0.4cm2/m2以下といった基準があります。
ところが、日本は基準が緩いどころか、気密性能に関する基準自体が存在していません。以前は、5.0cm2/m2という非常に緩い目安の基準があったのですが、現在はその基準すらなくなっています。
高気密住宅のメリット
高気密住宅にするためには、圧倒的に鉄筋コンクリート造が向いており、木造や鉄骨造は向いていません。鉄骨造の大手ハウスメーカーで気密性能を売りにしている会社は存在していないと聞いています。
そんな理由もあってか、十分な断熱・気密性能を確保している賃貸住宅の供給はほとんどないため、残念ながら賃貸住宅では結露が生じるのが当たり前になっているということです。
欧米では一般的な高気密・高断熱住宅はさまざまなメリットがあります。まず、暮らしがとても快適になります。QOL(人生の質)が大幅に向上するといっても過言ではないと思います。高気密・高断熱住宅は足元が冷えず、とても快適です。また、健康にもよく、エアコン1台で住戸全体を冷暖房することも可能で、冷暖房光熱費もとても安く済みます。
さらに、高気密・高断熱化に伴って建築費が増加しますが、それに伴う住宅ローンの支払い増加額よりも冷暖房光熱費の削減額のほうが大きく、経済的にもお得です。このように、高気密・高断熱住宅は、メリットばかりなのです。
家族の健康のために
記事の著者さんは、特に子育て世代には、高気密・高断熱住宅に住んでいただきたいと、筆者は考えています。それは、子どものアレルギーや喘息のリスクが大幅に下がるからです。一方、家の断熱性能が高くなると、アレルギーや喘息等の症状が改善されるという調査結果が明らかにされています。とも書かれていました。
そこで疑問に思われると思いますが、なぜ日本では、高気密・高断熱の賃貸住宅が供給されないのかというと、それは、高気密・高断熱化に伴って増加する建築費の費用負担者がオーナーであり、メリットの享受者が入居者であることが最大の理由のようです。
安定的な賃貸経営
ところが、先見の明をお持ちのオーナー様は、すでに賃貸住宅といえども、高性能なRC造で建てられていますので、入居者様の安全と健康、さらに省エネで低い光熱費を実現されていますので、当然入居者さんにも喜ばれながら、安定した賃貸経営をされています。
記事にもありましたが、本来、高気密・高断熱の賃貸住宅ならば、家賃が多少高くても、それ以上に冷暖房光熱費が下がるので、入居者も経済的なメリットがあります。ただ、これまでの消費者がそのことを知らないため、オーナーが高気密・高断熱化してもその価値を家賃に反映しにくく、賃貸事業の収益性の向上が見込みにくかったこともありました。
住まいを選ぶ上では、コストももちろん大事ですが、「暮らしの質」や「家族の健康」を優先して判断するべきですし、その前提として耐震性能と耐火性能が満たされていることは当然です。
だから私たちはRC住宅をオススメしています。