「現代人は12月と1月に最も死んでいる」「日本人の死亡原因の10%が『低温』!?」 命を守る室温対策、何度以上に設定すべき?
冬は冷え込むのが当然であり、少々の寒さは耐えることでむしろ肉体の鍛錬につながる――こうした“昭和的”な考えは改めたほうが良さそうだ。
冬本番を迎えるなか、部屋の低温状態を改善しないと思わぬ災厄が……。建築の専門家が警告。家の寒さが命を縮める!
2024年1月16日 11時8分 デイリー新潮
危険な日本の家
これはまたショッキングな記事が掲載されていましたね。
内容としてはいつもお伝えしているとおりですが、今日の記事は近畿大学建築学部教授の先生が書かれていたもので、十分なエビデンスを添えて日本の家に警鐘を鳴らしてくれています。
暖房ならぬ暖人
まず記事にあったのは、隙間が多く、断熱が十分ではない日本の住宅の場合、あえて言えば暖房は存在しません。私たちは「房を暖めている(ルームヒーティング)」のではなく、暖房器具を直接的に人にあてて暖めたり、あるいは人がいる周辺のみを暖めているに過ぎません。
ですから、正しくは「暖房」ではなく「暖人」あるいは「採暖」と言うべきなのです。それは結局、一時的、もしくは局所的に寒さ対策をしているだけで、いってみればその場しのぎです。ということ。
未だにノスタルジックな気持ちだけで、コタツが良いとか、石油ストーブにやかんを乗せたいとか、それを実践される方も多いですが、それは全くエコではないですし、生命と健康を保障できるものでもありません。それが趣味と言われてしまうと止められない気もしますが。
今の時代、昭和以前の暮らし方はもう綺麗に忘れてもらいたいと思います。
夏より冬に合わせて造るべし
記事にもありましたが、日本には「家のつくりようは、夏を旨とすべし」という言い伝えがあり、これは夏に快適に過ごせるように家をつくりましょうという意味で、この兼好法師が「徒然草」に記した有名な一文は、当時は妥当性を持っていたのでしょう。
しかし、現代においてはこう言い換えるべきです。「家のつくりようは、冬を旨とすべし」これは、冬が最も命の危険にさらされる季節であるという「現代の事実」に基づいた提言です。
教授の示していたデータでは、国内で最も古いと思われる1910年の国勢調査のデータを見ると、たしかに8月、つまり夏に最も多くの人が亡くなっています。暑さが大きな要因のひとつだったと考えられます。
ところが、1930年くらいから夏と冬の逆転が起こり始め、70年代には夏が最も少なく、冬に最も多くなる今と同じ状況に変化しているのです。日本に限らずアメリカでも、日本より20年ほど先取りして逆転現象が生じていたという報告もあります。これ以降50年以上にわたって日本では「冬>夏」で、12月と1月に亡くなる人が最も多い傾向が続いています。と書かれていました。
化学と近代化
そこで、どうしてこの逆転現象が起きたのかというと。
夏に死亡者数が多かった背景には食中毒が存在します。冷蔵庫がなく、食に関する衛生環境が悪かった時代は、暑さで食べ物が腐り、食中毒で命を落とす人が多かったのだと考えられます。しかし、冷蔵庫が普及して食中毒が減ると夏の死亡リスクは減り、相対的に冬の死亡リスクが目立つようになったというわけです。
これね、風水や家相などにも残っていますが、西にキッチンはNGとか、それは冷蔵庫の無い時代に強い西日が入る場所に食材があったらすぐに傷んでしまいますからね。
高温より低温がリスクです
さらに記事ではエビデンスが続きます。2015年に英国の医学系学術誌で発表された調査結果では、日本人の死亡者の約10%、およそ12万人が「低温」の影響で亡くなったと記されています。
一方、夏の「高温」による死亡者が占める割合は0.3%に過ぎません。低温と高温を比べると、実に約30倍も低温の死亡リスクは高いのです。近年、熱中症のリスクが注目されていますが、熱中症で病院に運ばれた人の9割以上はその日のうちに帰宅しています。こと「命」に関していうと、やはり夏の暑さより冬の寒さが圧倒的に危険といえるのです。
断熱と健康
つぎに、断熱性のすぐれた家に暮らすことでどれだけ健康は改善するのかという点も書かれていました。われわれが高断熱高気密住宅に引っ越した約2万4千人を対象に調査を行ったところ、驚くべき結果が出ました。
引っ越し後、15もの症状が明らかに改善したのです。具体的には、想像に難くない手足の冷え、せきやのどの痛みだけではなく、肌のかゆみやアトピー性皮膚炎、花粉症といった症状にまで改善が見られました。とのこと。
室温を適正にキープしましょう
これは私もお伝えしていることですが、事実、欧米では室内の温度を一定以上に保つことが常識になっています。例えばアメリカのニューヨークシティでは、10月1日から5月31日までの低温期、建物の所有者は、外気温が華氏55度(摂氏約12.8度)以下の場合、室内の温度を日中は華氏68度(摂氏20度)、夜間は外気温によらず華氏62度(摂氏約16.6度)以上に保たなければならないと行政が定めています。
また、2018年にはWHO(世界保健機関)が住宅と健康に関するガイドラインを示し、居住者の健康を守るために室温を18度以上にすることを強く推奨しています。欧米では文字通りの意味での暖房、つまりルームヒーティングの重要性が浸透しているため、このWHOの「強い推奨」は、G7などの先進国においてはもっぱら日本に向けられたものとさえいえるのです。
実際、先に紹介した英国の医学系学術誌発表の調査結果では、低温の影響で亡くなった人の割合は、調査対象13国のうち、中国に次いで日本が最も高かったという結果が出ています。と書かれていました。これもすぐに抜かれて最も危険な国となるに違いありません。
自然環境は味方か敵か
最後に教授が書かれていた、そんな対策は必要がない。豊かな四季の自然に身を委ねることこそが、人間にとって文字通り自然な状態なのであり、冬は家の中も含めて寒いのが当たり前なのだ――そう主張する人がいます。
しかし、低温を含めた自然環境は本当に人間の味方なのでしょうか。冬の死亡者数が多いことから分かるように、そうとは言い切れないはずです。自然は時に味方としてではなく、命を削る敵として立ちはだかってくる。そうであれば、低温対策をすることのほうが自然なことだと私は思うのです。
同様に地震や台風、火災などの災害に対しても、必要以上に抗う必要はないとか、最初から自然には勝てないとか、言われる方もいらっしゃいます。
いやいや、そこはしっかりと対策をしなければいけません。生命と財産を守るための家でなければいけないんです。だから私はRC住宅をオススメしています。