デザイン重視の「消火栓」アリ?SNS議論に 「本末転倒」厳しい意見も…建築&防災のプロの見解は
初期消火に使う「屋内用消火栓(収納箱)」のデザインを巡り、SNSで論争が巻き起こっている。
景観を重視した施設では、周囲と調和させた意匠の消火栓は珍しくない。しかし、生活者から見ると「本末転倒」だと理解できないケースもあるようだ。
防災設備に欠かせない消火栓。赤く光った表示灯と起動ボタンが上部に並び、下部の扉を開けるとノズルやホースなどが収納してある、なじみの存在だ。
2023年2月21日 18時25分 J-CASTニュース
屋内消火栓ってなに?
一般ニュースに屋内消火栓の話題が出るのは非常に珍しいことですが、何が話題になっていたのかというと、一般的に全く気にも留めてもらえていなかった部分のデザインについて語られていたようです。
で、何のことかと言いますと、左の写真(東京消防庁さんから拝借)の設備がそれなんですが、言われてみれば学校やオフィス、マンションなどで比較的規模の大きい建物に設置されています。
この屋内消火栓設備は、火災の初期消火を目的としたもので、人が操作して使用する設備です。
屋内消火栓の種類には、1号消火栓、易操作性1号消火栓、および2号消火栓があります。(写真は1号消火栓)
デザインと目的
記事によれば、建設関係者を名乗るツイッターユーザーが2023年2月中旬、2つの消火栓の写真を投稿し、それぞれ「残念」「いいね」と講評したそうなんです。
そんなことからでも盛り上がってしまうのが今時らしいのですが、「残念」と評されたのは、一般的なクリーム色の消火栓で、写真と同様のものだったのではないでしょうか。
これに対して投稿者は消火栓と壁の材質・色が合っていない、明朝体で赤く書かれた「消火用散水栓 消火器」のフォントと色が施設全体と調和していないことを理由に挙げていたそうです。
一方で「いいね」と評価された消火栓はこれとは対照的に、一見しただけでは気づかないような壁と同化したデザインだったそうで、投稿者は施設全体のサイン(案内図など)と合わせていると解説していたそうです。
議論に参加されていた方の多くは「デザイナーの自己満足」「本末転倒」と視認性が低いために、いざという時に見つけられないという懸念だったようですが、少なからずデザインに共感された意見もあったそうです。
デザインについて議論されるのも良いことですが、何よりも今回話題になってよかったと思うのは、この消火栓を意識してもらえたということではないでしょうか。
大切なのは使えること
記事の中でも語られていましたが、「本来、建物の防火性能は消火栓のデザイン単体だけで議論するものではなく、建物の構造体としての耐火性能、スプリンクラーやガス消火設備といったメインの消火設備、消防隊の活動しやすいよう進入用の窓の位置や消防活動空地、火災時の煙を逃がす排煙計画、避難計画といったもので総合的に判断するものですが、そこを一般の方に理解頂くことは難しい」とは、まさにその通りだと思います。
しかし、もし身の回りでこの消火栓を設置してある場所が記憶にあるのなら、是非その使い方を覚えておいて欲しいのです。それだけで初期消火を行うことが出来、火災の拡大を食い止められる可能性があります。
こう見えて私、若い頃は地元で消防団員として活動させて頂いていましたので、消火栓の取り扱いや救急救命の講習なども受けていたこともあり、少しは経験を生かすことが出来ると思いますが、これまで全く意識されていなかった方にも、脳内シミュレーションして頂くだけで、いざという時にきっと役に立つと思います。
当然ながら、消火栓のデザインも考えられていないものより考えられたものの方が良いに決まっていますし、それが目的を果たせるものであることは大前提に決まってます。
機能を最大限発揮しながら美しい意匠の建物が増えると良いと思います。
是非RCdesignまでご相談ください。
RC住宅で暮らしをデザインしています。